- すぐに読めるゆかいな話が読みたい。
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★この文章は2分で読めます
ある日、王さまは乞食のような身なりをして、ひとりで町へやってきました。
町には小さな靴屋が一軒あって、おじいさんがせっせと靴をつくっておりました。
王さまは靴屋の店に入って、
「これこれ、じいや、そのほうはなんという名前か。」とたずねました。
靴屋のじいさんは、そのかたが王さまであるとは知りませんでしたので、
「ひとにものを聞くなら、もっとていねいに言うものだよ。」と、つっけんどんに言って、とんとんと仕事をしていました。
「これ、名前はなんと申すぞ。」とまた王さまはたずねました。
「ひとに口を利くには、もっとていねいに言うものだというのに。」とじいさんはまた、ぶっきらぼうに言って、仕事をしつづけました。
王さまは、なるほど自分がまちがっていた、と思って、こんどは優しく、「おまえの名前を教えておくれ。」とたのみました。
「わしの名前は、マギステルだ。」とじいさんは、やっと名前を教えました。
そこで王さまは、「マギステルのじいさん、ないしょの話だが、おまえはこの国の王さまはばかやろうだと思わないか。」とたずねました。
「思わないよ。」とマギステルじいさんはこたえました。
「それでは、小指の先ほどばかだとは思わないか。」と王さまはまたたずねました。
「思わないよ。」とマギステルじいさんはこたえて、靴のかかとをうちつけました。
「もしおまえが、王さまは小指の先ほどばかだといったら、わしはこれをやるよ。だれも他にきいてやしないから、大丈夫だよ。」と王さまは、金の時計をポケットから出して、じいさんのひざにのせました。
「この国の王さまがばかだといえばこれをくれるのかい。」とじいさんは、金づちをもった手をわきにたれて、ひざの上の時計をみました。
「うん、小さい声で、ほんのひとくち言えばあげるよ。」と王さまは手をもみあわせながらいいました。
するとじいさんは、やにわにその時計をひっつかんで床の上にたたきつけました。
「さっさと出てうせろ。この不忠者めが。この国の王さまほどご立派なおかたが、世界中にまたとあるかッ。」
そして、もっていた金づちをふりあげました。
王さまは靴屋の店からとび出しました。とび出すとき、日覆いの棒にごつんと頭をぶつけて、大きなこぶをつくりました。
けれど王さまは、こころを花のように明るくして、
「わしの人民はよい人民だ。わしの人民はよい人民だ。」とくりかえしながら、宮殿の方へ帰ってゆきました。
読了ワーク
思い出してみよう
- 靴屋のおじいさんの名前は何でしたか。
- 王さまは靴屋のおじいさんに何と言ったら金の時計をあげると言いましたか。
- 靴屋のおじいさんは、金の時計をどうしましたか。
調べてみよう
- “やにわに”とは、どんな意味でしょうか。
単語ピックアップ
1.乞食(こじき)
食べ物やお金などを人から恵んでもらいながら生活する人のこと。
2.不忠(ふちゅう)
真心を尽くして仕える王や主君に背くさま。
3.日覆い(ひおい)
太陽の光をさえぎるための覆いのこと。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- マギステル
- 王さまのことを小指の先ほどばかだと言ったら。
- 時計をひっつかんで床の上にたたきつけた。