ゆかいな話 PR

覆面調査にのり出した王さまの話

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やなかゆう
やなかゆう
新美南吉作『王さまと靴屋』です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • すぐに読めるゆかいな話が読みたい。
  • あまり知られていない作品を読みたい。
  • 小学二年生くらいの子どもが読み切れる文学作品を探している。

このおはなしの作者

新美南吉にいみなんきち(1913年~1943年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

おはなしの始まりはここから

★この文章は2分で読めます

あるおうさまは乞食こじきのようななりをして、ひとりでまちへやってきました。

まちにはちいさな靴屋くつや一軒いっけんあって、おじいさんがせっせとくつをつくっておりました。

おうさまは靴屋くつやみせはいって、

「これこれ、じいや、そのほうはなんという名前なまえか。」とたずねました。

靴屋くつやのじいさんは、そのかたがおうさまであるとはりませんでしたので、

「ひとにものをくなら、もっとていねいにうものだよ。」と、つっけんどんにって、とんとんと仕事しごとをしていました。

「これ、名前なまえはなんともうすぞ。」とまたおうさまはたずねました。

「ひとにくちくには、もっとていねいにうものだというのに。」とじいさんはまた、ぶっきらぼうにって、仕事しごとをしつづけました。

おうさまは、なるほど自分じぶんがまちがっていた、とおもって、こんどはやさしく、「おまえの名前なまえおしえておくれ。」とたのみました。

「わしの名前なまえは、マギステルだ。」とじいさんは、やっと名前なまえおしえました。

そこでおうさまは、「マギステルのじいさん、ないしょのはなしだが、おまえはこのくにおうさまはばかやろうだとおもわないか。」とたずねました。

おもわないよ。」とマギステルじいさんはこたえました。

「それでは、小指こゆびさきほどばかだとはおもわないか。」とおうさまはまたたずねました。

おもわないよ。」とマギステルじいさんはこたえて、くつのかかとをうちつけました。

「もしおまえが、おうさまは小指こゆびさきほどばかだといったら、わしはこれをやるよ。だれもほかにきいてやしないから、大丈夫だいじょうぶだよ。」とおうさまは、きん時計とけいをポケットからして、じいさんのひざにのせました。

「このくにおうさまがばかだといえばこれをくれるのかい。」とじいさんは、かなづちをもったをわきにたれて、ひざのうえ時計とけいをみました。

「うん、ちいさいこえで、ほんのひとくちえばあげるよ。」とおうさまはをもみあわせながらいいました。

するとじいさんは、やにわにその時計とけいをひっつかんでゆかうえにたたきつけました。

「さっさとてうせろ。この不忠ふちゅうものめが。このくにおうさまほどご立派りっぱなおかたが、世界中せかいじゅうにまたとあるかッ。」

そして、もっていたかなづちをふりあげました。

おうさまは靴屋くつやみせからとびしました。とびすとき、日覆ひおぼうにごつんとあたまをぶつけて、おおきなこぶをつくりました。

けれどおうさまは、こころをはなのようにあかるくして、

「わしの人民じんみんはよい人民じんみんだ。わしの人民じんみんはよい人民じんみんだ。」とくりかえしながら、宮殿きゅうでんほうかえってゆきました。

やなかゆう
やなかゆう
一部、乱暴な言葉があったので書き換えました

読了ワーク

思い出してみよう

  1. 靴屋のおじいさんの名前は何でしたか。
  2. 王さまは靴屋のおじいさんに何と言ったら金の時計をあげると言いましたか。
  3. 靴屋のおじいさんは、金の時計をどうしましたか。

調べてみよう

  • “やにわに”とは、どんな意味でしょうか。

単語ピックアップ

1.乞食(こじき)

食べ物やお金などを人から恵んでもらいながら生活する人のこと。

2.不忠(ふちゅう)

真心を尽くして仕える王や主君に背くさま。

3.日覆い(ひおい)

太陽の光をさえぎるための覆いのこと。

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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  1. マギステル
  2. 王さまのことを小指の先ほどばかだと言ったら。
  3. 時計をひっつかんで床の上にたたきつけた。