- すぐに読めて可愛い世界観の話が読みたい。
- 3歳以上の子どもに読み聞かせしたい。
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おはなしの始まりはここから
★この文章は2分で読めます
ある所にちょっと慾ばりなお猫さんがいました。
ある朝、新聞を見ますと、写真屋さんの広告が出ていました。
「写真屋さんをはじめます。今日写しにいらした方の中で、一番良く写った方のは新聞に載せて、ごほうびに一円五十銭差し上げます。」
お猫さんは鏡を見ました。
そして身体中の毛をこすってピカピカに光らしました。そして、お隣のあひるさんの所へ行きました。
「あひるさん、今日は。すみませんけど、リボンを貸して下さいな。」と言いました。
あひるさんは、リボンを貸してくれて、「お猫さん、どうか、無くなさないでね。」と言いました。
お猫さんは、それを頭のてっぺんに結んで、写真屋さんへでかけました。
歩いているうちに、「早く行かないと、お客さんが一杯つめかけて来て、写してもらえないかも分からない。」と思うと、胸がドキドキして歩いていられません。
といって、猫の町には円タクはなし、仕方がないので、大急ぎで駆け出しました。
写真屋さんへ来ました。
お猫さんはもう一度鏡の前で、身体をこすり直しました。
そして、頭を見ましたら、リボンがありません。
あんまり走ったので、落としてしまったのです。
「さあ、写しますよ。笑って下さい。」と、写真屋の犬さんが言いましたけれども、リボンのことを考えると、笑うどころではありません。
今にも泣きそうな顔をしました。
写真を写してしまうと、お猫さんはトボトボとお家へ帰って来て、鏡を見ました。
涙がほっぺたを流れて、顔中の毛がグシャグシャになっていました。
「これじゃあ、一等どころかビリッコだ。」と思うと、又もや涙が流れて出ました。
「あひるさんのリボンを買って返すにもお金はなし……」と思うと、又もや涙が流れ出ました。
ところが、あくる日、おそるおそる新聞をみますと、「泣いているお猫さん。一等」と大きな活字で書いてありました。
お猫さんはとびあがる程喜びました。
そして写真屋さんへ行って一円五十銭もらいました。
お猫さんはそれを大切にお財布に入れて、あひるさんの所へ行きました。
行きながら、「リボン代をこのお金で払うことにしよう。まあ、せいぜい五十銭位なものだから、一円は残る」と思いました。
お猫さんはあひるさんに言いました。
「どうか、リボンのお値段を言って下さい。遠慮なくほんとの所を。」
あひるさんは言いました。ほんとの所を。
「ほんとの所はあれは一円五十銭なんですの。」
お猫さんはぼんやりしてしまいました。けれども仕方ありません。一円五十銭あひるさんに払いました。
お猫さんのお財布の中にはいくら残っていますか? 皆さん、計算してください。
読了ワーク
思い出してみよう
- 写真屋の犬さんが「笑ってください」と言って写真を撮りましたが、お猫さんは笑えませんでした。それはなぜでしょうか。
- お猫さんは写真屋さんからごほうびのお金を受け取りました。その後、そのお金はどうなりましたか。
調べてみよう
- 『慾』と『欲』の違いは何でしょうか。
単語ピックアップ
活字(かつじ)
①活版印刷に使う凸型の文字の型。(その型を対象に押しつける印刷が活版印刷)②印刷した文字のこと
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- あひるさんから借りたリボンをどこかに落としてしまったから
- あひるさんへのリボンの弁償代で全てなくなった