不思議な話 PR

ドラ○もんみたいな話③

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やなかゆう
やなかゆう
海野十三作、『洪水大陸を吞む』の三話目です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • SF小説やドラえもんが好き。
  • あまり知られていない作品を読みたい。
  • 5歳以上の子どもに読み聞かせしたい。

このおはなしの作者

海野十三うんのじゅうざ(1897年~1949年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

前回までのあらすじ

ドラ○もんみたいな話②【この文章は5分で読めます】海野十三作、「洪水大陸を吞む」の第二話です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

おはなしの始まりはここから

★この文章は4分で読めます

「こんどは、弟月おとうとづきほうをおっかけよう。さっきよりもずっとおおきくなっているはずだ。」

おじさんはそういってスイッチをりかえた。

地平線ちへいせんくろよこにのびている。
そのうえに、つきたかくかがやいていた。

「これは兄月あにづきほうだ。弟月おとうとづきはもっとひだりほうにある。」

画面がめんよこにうごいてく。と、とつぜん画面がめんあかるくなった。そしてちょうちんが画面がめんいっぱいにてきたとおもった。

ところがそれはちょうちんではなく、弟月おとうとづきほうだった。
兄月あにづきにくらべて、もう2、300にさんびゃくばいおおきさになっている。

「これが弟月おとうとづきですか。おおきいですね。なぜこんなにおおきくなったんです。」

弟月おとうとづきはだんだんくだってきたのだ。地球ちきゅう引力いんりょくによってせられたんだ。ていてごらん。いま弟月おとうとづき地球ちきゅうにぶつかるから……。」

「おじさん。つき地球ちきゅうにぶつかったら、どんなことがこるんですか。」

ていたまえ。もうすぐだ。」

画面がめん4、5しごかいりかえられた。そのたんびに弟月おとうとづきもののようにおおきくなった。
まるで地球ちきゅうそらにうつっているようであった。

そのあやしいつきしたに、アトランチスじんたちがあつまってふるえ、のろいのこえをあげ、やけになって人殺ひとごろしをし、またしずかにかみいのりをあげているのがえた。

方々ほうぼうに、えんえんとがもえあがっていた。

かみへささげるかがりか、それともぞく民家みんかはなったか。ものすごい光景こうけいに、三四郎さんしろうはたびたびをふせねばいられなかった。

「ほら、はじまった。弟月おとうとづき地球ちきゅう触接しょくせつしたよ。あれ、あのように地球ちきゅうにぶつかっている。しかも弟月おとうとづき自転じてんをつづけているんだ。」

おじさんの説明せつめいこえがふるえている。

「あっ、おそろしい!」

三四郎さんしろうは、両手りょうて自分じぶんあたまをおさえて、がたがたふるえだした。

よ、弟月おとうとづき地球ちきゅうにぶつかっている。そこは大洋たいようらしい。すごい火花ひばなほのお電光でんこうが、たがいにじりあって、もくらむほどだ。

なみはさかまき、くもとも湿気しっけともけむりともつかないもやもやしたものが触接しょくせつめんのところから空高そらたかくまいあがる。つきは、ときどきそらほうへとびあがり、そのあとでまたちてて、地球ちきゅう衝突しょうとつする。

そのたびに、すごい地獄絵じごくえがひろがる。つきがとびあがったときにえたが、あの死灰しかいのようであったつきが、いまはその下半分したはんぶんなかへほうりこんだ石炭せきたんのようにあかあかくもえあがっているのだった。

「おお、弟月おとうとづき最後さいごちかづいた。大爆発だいばくはつをして、こなごなにとびるよ、あの弟月おとうとづきが……。」

おじさんのこえわらないうちに、画面がめんもくらむ閃光せんこうで、ぴかぴか、くらッくらッとひかり、画面がめんに、もののかたち見分みわけることができなかった。

三四郎さんしろうは、天変地異てんぺんちいのおそろしさに、おおきなこえをあげてそのにうちした。もう画面がめんつづける勇気ゆうきはない。

「……もうすんだよ。弟月おとうとづきは、かげも、かたちもなくなったよ。これからがもっと大事だいじなところ。すごい光景こうけいえるんだ。元気げんきして、もう一度いちど画面がめんてごらん。なにしろ一万年前いちまんねんまえ出来事できごとなんだから、そんなにこわがることはない。」

おじさんに元気げんきづけられて、三四郎さんしろうはようやくかおをあげ、映写幕えいしゃまくへそっとをやった。もはや天空てんくう乱舞らんぶられなかった。

兄月あにづきつめたいひかりだけが、そらにあった。下半分したはんぶんはアトランチス大陸たいりくが、くじらのようにくろずんで、うみうえかんでいた。

このときうみが、にわかにふくれがった。たかたかくふくれがる。あたらしい大陸たいりく出来できて、それがうごきしたのかとおもったくらいであったが、事実じじつくろ海水かいすいがふくれあがったのだ。

たかたかくアトランチス大陸たいりく山脈さんみゃくよりももっとたかく! そしてそのふくれたうみは、ずんずんと大陸たいりくちかづいてるのであった。

「あっ、津波つなみだ。すごい津波つなみだ。アトランチス大陸たいりくが、津波つなみにのまれてしまう。」

三四郎さんしろうは、おもわずさけんだ。

「そうだ。アトランチス大陸たいりくが、いまなみにのまれてしまうのだ。そしてすばらしい文化ぶんかったその大陸たいりくが、永遠えいえんなみしたにのまれてしまうのだ。ひともけだものも、それからとりやコウモリまでも、みんなつばさちからおよばないで、なみしたにのまれてしまうのだ。」

そのとおりだった。

三四郎さんしろうは、おそろしくもかなしきアトランチス大陸たいりくひと生物せいぶつとの最後さいごとどけた。そのためにかれは、全身ぜんしんちからをつかいったとおもった。

ドラ○もんみたいな話③【この文章は4分で読めます】海野十三作、「洪水大陸を吞む」の第三話です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

読了ワーク

思い出してみよう

  1. 「弟月」はどうして大きくなってしまったのでしょうか。
  2. 地球にぶつかった「弟月」は、最後にどうなりましたか。

調べてみよう

  1. “やけになる”とはどういうことですか。
  2. “炉”とはどんなものですか。

単語ピックアップ

1.引力(いんりょく)

2.触接(しょくせつ)

3.死灰(しかい)

4.閃光(せんこう)

注目★四字熟語

天変地異(てんぺんちい)

音読シートダウンロード

★この物語“洪水大陸を吞む③【大陸の最後】”の音読シートがダウンロードできます。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  1. 地球の引力によって引き寄せられたから。
  2. 大爆発してかげも形もなくなった。