不思議な話 PR

空の世界に帰れなくなってしまった女の話④

記事内に商品プロモーションを含む場合があります
やなかゆう
やなかゆう
鈴木三重吉作『星の女④』です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • 長めの話を少しずつ読みたい。
  • 長い話を集中して読む練習をしたい。
  • あまり知られていない話を読みたい。

このおはなしの作者

鈴木三重吉(1882年~1936年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

前回までのあらすじ

空の世界に帰れなくなってしまった女の話③【この文章は5分で読めます】鈴木三重吉作、「星の女」の第三話です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

おはなしの始まりはここから

★この文章は4分で読めます

おとこは、もうおかあさまはどこへもていかないものとおもって、安心あんしんして寝床ねどこはいりました。

すると、そのうちに、また、ふいとうたこえがするのでめました。

じっといていると、やっぱり昨夜ゆうべおなうつくしいこえで、

「ルビーがしきりといている。
ぬうちにかえらねば、
うまひづめいとる。」

うたいました。

かあさまは、ちょうど一番いちばんしたどもがましたのをかしつけていました。

そとこえむと、おかあさまは、

「ねんねんよ、ねんねんよ。この今宵こよいれてく。このにここでかれては、わたしもおそらくのだから。」と、ってなみだをふきました。

一番いちばんうえおとこは、またひとりでにねむくなりました。

そして、「明日あしたかあさまにそうって、あかぼうれてかえってもらおう。そうすればかあさまはもう自分じぶんのおうちかえらないでむだろう。」と、こうおもいながらてしまいました。

あくるあさましてますと、おかあさまは、いつのにか、一番いちばんしたおとうと一緒いっしょに、いなくなっていました。

二番目にばんめおとうとは、かあさまがいないとってわあわあきました。

おとこは、「かなくてもいいよ。かあさまはよるになればまたくださるから。」とって、なだめました。

しかしおとうとは、なんってもまないので、しまいにはなみだがまっれました。

そのうちに、れて、そらにはほしがいっぱいました。

するともなく、入口いりぐちいて、おかあさまがかえってました。

二番目にばんめおとこは、はしってて、おかあさまのりついてきながら、「二人ふたりきりでここにいるのはいや。かあさまのおうちれてって。」といました。

かあさまは二人ふたりほおずりをして、また昨夜ゆうべのような、美味おいしい果物くだものけてべさせました。

一番上いちばんうえおとこは、「かあさまはとうとう二人ふたりともおうちれてってしまったのね。とうさまがかえったら、なんえばいいの。」と心配しんぱいそうにきました。

かあさまは、「それはまたあとでおはなしするから、はやくおべなさい。」といました。

おとこは、ひもじくてたまらないので、いそいで果物くだものべました。
そして、もうかなしいことも心配しんぱいごともわすれて、おかあさまとたのしくおはなしをして、しまいに寝床ねどこはいりました。

おとこがたちかくに、ふとめました。そうすると、またそとうたこえがしていました。

ぬうちにかえらねば、
うまひづめいとる。
二人ふたりどおいている。」

と、小鳥ことりのようなうつくしいこえうたっています。おかあさまは、二番目にばんめましたのをかせながら、「ねんねんよ、ねんねんよ。このたられてく。あとでこのかれては、わたしもおそらくのだから。」と、かなしそうにいました。

おとこはそのうたきながら、またすやすやと寝入ねいってしまいました。

あさきてますと、まどにはもうひかりがまっ黄色きいろしていました。

そして、おかあさまもおとうともみんないなくなっていました。

おとこ一日いちにち一人ひとりつづけて、なみだがまっれました。

やがてよるになって、大空おおぞらほしかがやきはじめたとおもうと、また入口いりぐちいて、おかあさまがかえってました。

おとこはおかあさまのりすがって、「かあさまはどうしてみんなをれてってしまったの。とうさまがかえったら、びっくりするよ。はやくみんなをれてかえってね。ねえ、かあさま。とうさまが可哀想かわいそうだから。」と、たのみました。

かあさまは、「そんなことはあとにして、はやくこれをおがりなさい。」といながら、そらからって果物くだものをたくさんならべました。

しかしおとこは、いくらすすめてもべませんでした。
かあさまは、「それでは、これからわたし一緒いっしょに、おまえの大好だいすきなあかぼうと、あの二人ふたりおとうとたちのところへきましょう。さあおちなさい。」といました。

おとこは、「わたし一人ひとりでここにいる。とうさまは、かえるまでちゃんとおうちばんをしておいでとったから、わたし一人ひとりばんをするの。」といました。

「それではわたしはもうきますよ。とうさまは明日あしたかえっていらっしゃるはずだから、おかえりになったらそうってください。かあさまは、たまかざりの着物きものつけましたから、もうおうちかえりましたとってください。かあさまはこれまでながあいだ毎日まいにち毎日まいにちどんなにおうちかえりたかったかれません、もう今晩こんばんきりで二度にどとここへはないから、よくかあさまのおかおておきなさい。それからとうさまが、なぜ二階にかいのお部屋へやけたとおきになったら、二人ふたりおんなひとが、ゆめなかで、かあさまがいていて可哀想かわいそうだからけておあげとったから、けたのですとおいなさい。」

かあさまはこうってさめざめときました。

かあさまのおうちはどこにあるの? ここからよっぽどとおいの?」と、おとこきました。

「それは、あとでおとうさまにおきなさい。」

ほしおんなは、こうって、もなくそらかえってしまいました。

空の世界に帰れなくなってしまった女の話⑤【この文章は5分で読めます】鈴木三重吉作、「星の女」の第五話です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。 ...

読了ワーク

思い出してみよう

  1. 赤ん坊の次にお母さんと一緒にいなくなってしまったのは誰ですか。
  2. お母さんから「赤ん坊と二人の弟たちのところに行こう」と言われた一番上の男の子は、何と言いましたか。
  3. お父さんからなぜ二階のお部屋を開けたのか聞かれた場合、何と言いなさいとお母さんは言いましたか。

音読シートダウンロード

★この物語“星の女④”の音読シートがダウンロードできます。
準備中

読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  1. 一番下の弟。
  2. 父さまが帰るまで、私は一人でお家の番をすると言った。
  3. 「夢の中で二人の女の人が、母さまが泣いて可哀想だから開けておあげと言ったから開けた」と言う。