- 長めの話を少しずつ読みたい。
- 長い話を集中して読む練習をしたい。
- あまり知られていない話を読みたい。
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前回までのあらすじ
おはなしの始まりはここから
★この文章は4分で読めます
男の子は、もうお母さまはどこへも出ていかないものと思って、安心して寝床へ入りました。
すると、そのうちに、また、ふいと歌の声がするので目が覚めました。
じっと聞いていると、やっぱり昨夜と同じ美しい声で、
「ルビーがしきりと泣いている。
日が出ぬうちに帰らねば、
馬の蹄が糸を切る。」
と謡いました。
お母さまは、ちょうど一番下の子どもが目を覚ましたのを寝かしつけていました。
外の声が止むと、お母さまは、
「ねんねんよ、ねんねんよ。この子は今宵連れて行く。この子にここで泣かれては、私もお空で泣くのだから。」と、言って涙をふきました。
一番上の男の子は、またひとりでに眠くなりました。
そして、「明日は母さまにそう言って、赤ん坊を連れて帰ってもらおう。そうすれば母さまはもう自分のお家へ帰らないで済むだろう。」と、こう思いながら寝てしまいました。
あくる朝目を覚まして見ますと、お母さまは、いつの間にか、一番下の弟と一緒に、いなくなっていました。
二番目の弟は、母さまがいないと言ってわあわあ泣きました。
男の子は、「泣かなくてもいいよ。母さまは夜になればまた来て下さるから。」と言って、宥めました。
しかし弟は、何と言っても泣き止まないので、しまいには涙で目がまっ赤に腫れました。
そのうちに、日が暮れて、空には星がいっぱい出ました。
すると間もなく、入口の戸が開いて、お母さまが帰って来ました。
二番目の男の子は、走って来て、お母さまの手に取りついて泣きながら、「二人きりでここにいるのはいや。母さまのお家へ連れてって。」と言いました。
お母さまは二人に頬ずりをして、また昨夜のような、美味しい果物を分けて食べさせました。
一番上の男の子は、「母さまはとうとう二人ともお家へ連れてってしまったのね。父さまが帰ったら、何と言えばいいの。」と心配そうに聞きました。
お母さまは、「それはまたあとでお話するから、早くお食べなさい。」と言いました。
男の子は、ひもじくてたまらないので、急いで果物を食べました。
そして、もう悲しいことも心配ごとも忘れて、お母さまと楽しくお話をして、しまいに寝床へ入りました。
男の子は明け方近くに、ふと目が覚めました。そうすると、また外に歌の声がしていました。
「日が出ぬうちに帰らねば、
馬の蹄が糸を切る。
二人は夜通し泣いている。」
と、小鳥のような美しい声で謡っています。お母さまは、二番目の子が目を覚ましたのを寝かせながら、「ねんねんよ、ねんねんよ。この子が寝たら連れて行く。あとでこの子に泣かれては、私もお空で泣くのだから。」と、悲しそうに言いました。
男の子はその歌を聞きながら、またすやすやと寝入ってしまいました。
朝起きて見ますと、窓にはもう日の光がまっ黄色に射していました。
そして、お母さまも弟もみんないなくなっていました。
男の子は一日一人で泣き続けて、涙で目がまっ赤に腫れました。
やがて夜になって、大空に星が輝きはじめたと思うと、また入口の戸が開いて、お母さまが帰って来ました。
男の子はお母さまの手に取りすがって、「母さまはどうしてみんなを連れてってしまったの。父さまが帰ったら、びっくりするよ。早くみんなを連れて帰ってね。ねえ、母さま。父さまが可哀想だから。」と、頼みました。
お母さまは、「そんなことはあとにして、早くこれをお上がりなさい。」と言いながら、空から持って来た果物をたくさん並べました。
しかし男の子は、いくらすすめても食べませんでした。
お母さまは、「それでは、これから私と一緒に、おまえの大好きな赤ん坊と、あの二人の弟たちのところへ行きましょう。さあお立ちなさい。」と言いました。
男の子は、「私は一人でここにいる。父さまは、帰るまでちゃんとお家の番をしておいでと言ったから、私は一人で番をするの。」と言いました。
「それでは私はもう行きますよ。父さまは明日帰っていらっしゃるはずだから、お帰りになったらそう言って下さい。母さまは、玉の飾りの着物を見つけましたから、もうお家へ帰りましたと言って下さい。母さまはこれまで長い間、毎日毎日どんなにお家へ帰りたかったか知れません、もう今晩きりで二度とここへは来ないから、よく母さまのお顔をみておきなさい。それから父さまが、なぜ二階のお部屋を開けたとお聞きになったら、二人の女の人が、夢の中で、母さまが泣いていて可哀想だから開けておあげと言ったから、開けたのですとお言いなさい。」
お母さまはこう言ってさめざめと泣きました。
「母さまのお家はどこにあるの? ここからよっぽど遠いの?」と、男の子は聞きました。
「それは、あとでお父さまにお聞きなさい。」
星の女は、こう言って、間もなく空へ帰ってしまいました。
読了ワーク
思い出してみよう
- 赤ん坊の次にお母さんと一緒にいなくなってしまったのは誰ですか。
- お母さんから「赤ん坊と二人の弟たちのところに行こう」と言われた一番上の男の子は、何と言いましたか。
- お父さんからなぜ二階のお部屋を開けたのか聞かれた場合、何と言いなさいとお母さんは言いましたか。
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準備中
読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- 一番下の弟。
- 父さまが帰るまで、私は一人でお家の番をすると言った。
- 「夢の中で二人の女の人が、母さまが泣いて可哀想だから開けておあげと言ったから開けた」と言う。