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お金では買えない幸せについての話①

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やなかゆう
やなかゆう
秋田雨雀作『三人の百姓①【前編】』です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • 読み応えのある話が読みたい。
  • あまり知られていない作品を読みたい。
  • 4歳以上の子どもに読み聞かせしたい。

このおはなしの作者

秋田雨雀あきたうじゃく(1883年~1962年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

おはなしの始まりはここから

★この文章は3分で読めます

むかし、あるきたくに山奥やまおくひとつのむらがありました。

そのむら伊作いさく多助たすけ太郎右衛門たろうえもんという三人さんにん百姓ひゃくしょうがありました。

三人さんにん百姓ひゃくしょうすこしばかりのたがやしながら、その合間あいますみいて三里さんりばかりはなれた城下じょうかりにくのを仕事しごとにしておりました。

三人さんにん百姓ひゃくしょううまれたむらというのは、それはそれはさびしいちいさなむらで、あきになると、やま一面いちめん紅葉もみじになるので、城下じょうかひとたちが紅葉もみじるほか、なん取柄とりえもないようなむらでありました。

しかし百姓ひゃくしょうたちのむらはいるところにおおきなかわながれて、そのかわには、あきになると、岩魚いわな山女やまめ沢山たくさんおよいでいました。むらひとたちは、みんなたのしそうに、元気げんきはたらいていました。

伊作いさく多助たすけ太郎右衛門たろうえもん三人さんにんは、あるあきすえに、いつものように背中せなか炭俵すみだわら三俵さんびょうずつ背負せおって城下じょうかかけてきました。

三人さんにんむらときは、まだかわながれに朝霧あさぎりがかかって、河原かわらいしうえにはしもしろりていました。

今日きょうも、はあお天気てんきになるべいてや。」

伊作いさくはしわたりながら、一人言ひとりごとのようにいうと、ほかの二人ふたりたかこえで、「そんだ、お天気てんきになるてや。」と調子ちょうしわせて、はしわたってきました。三人さんにんはいつものように、すみってしまったあとで、まち居酒屋いざかや一杯いっぱいひっかけるたのしみのほか、なんかんがえもなくあしはやめてみちあるいてきました。

伊作いさくたか一番丈夫いちばんじょうぶおとこだけに、とうげのぼときは、二人ふたりから一町いっちょうほどもさきあるいていました。

多助たすけ太郎右衛門たろうえもんは、たかこえはなしをしながらさかのぼってきました。

二人ふたりはまよめっていたむらむすめが、亭主ていしゅなれてかえってたというはなしを、さもさも大事件だいじけんのようにちかられてはなしていたのでした。

とうげすと、ひろ平原へいげんになって、そこから城下じょうかほうまで、十里四方じゅうりしほう水田すいでんがひろがって、には黄金こがねいね一杯いっぱいみのっていました。

伊作いさくあしあ、なんてはやいんだべい!」
多助たすけ太郎右衛門たろうえもんいました。

「ああしたおとこあ、さかした一服いっぷくやってるころだべい。」
太郎右衛門たろうえもんわらいながらこたえました。多助たすけ太郎右衛門たろうえもんが、とうげして平原へいげんえるところまでときさかしたほう伊作いさく一生懸命いっしょうけんめい二人ふたりほうて、っているのが、えました。

「どうしたんだべいな? 伊作いさくあ、おいらをんでるてばな。」
多助たすけいました。太郎右衛門たろうえもんかおをしかめてさかした見下みおろしました。

はやい、はやい……面白おもしろいものがっこってるぞ!」という伊作いさくこえがきこえてました。

面白おもしろいものがっこってるよ。」と多助たすけは、わらいながらうと、太郎右衛門たろうえもんおおきなくちけてわらいました。

伊作いさくひろうんだもの、ろくなものでなかべいになあ!」と太郎右衛門たろうえもんして、多助たすけ一緒いっしょすこいそいでさかりてきました。

さかしたほうでは、伊作いさくはさも、もどかしそうに、二人ふたりりてるのをっていました。

だまされたとおもって、いそぐべし!」

多助たすけは、炭俵すみだわらをガサガサさせて、はしってきました。太郎右衛門たろうえもんは、がはしっこくないおとこでしたから、多助たすけおくれて、一人ひとりさかりてきました。太郎右衛門たろうえもん伊作いさくのいたところへいたときには、伊作いさく多助たすけ大事だいじそうにして、なにげてたりさわってたりしていました。

なにあ、っこってるんだてよ?」と太郎右衛門たろうえもん間抜まぬけなかおをして、二人ふたりっているあいだかおんでやりました。

お金では買えない幸せについての話②【この文章は5分で読めます】秋田雨雀作、「三人の百姓」の中編です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

読了ワーク

思い出してみよう

  1. 伊作、多助、太郎右衛門の三人の仕事は何ですか。
  2. 伊作はどんな男だと書かれていますか。

調べてみよう

  1. “岩魚”や“山女”はどんな魚でしょうか。
  2. “碌”とは何を表す言葉でしょうか。

単語ピックアップ

1.城下(じょうか)

城の下周辺に発展した町のこと。

2.取柄(とりえ)

長所。優れたところ。

音読シートダウンロード

★この物語“三人の百姓①【前編】”の音読シートがダウンロードできます。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  1. 田を耕しながら、炭を焼いて三里ばかり離れた城下に売りに行く仕事。
  2. 背が高く、一番丈夫な男。