- ユニークな発想の話が読みたい。
- 可愛いお菓子のパッケージを捨てる時に罪悪感に似た感情がある。
- 4歳以上の子どもに読み聞かせしたい。
このおはなしの作者
※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。
前回までのあらすじ
ある村に来た飴チョコの天使は、小さな駄菓子屋に置かれることになる。
そして、入れられたビンの中から、季節が移り変わる様子を眺めていた。
その間、だれも飴チョコを買うものがおらず、月日がたつにつれて、ガラスのびんは自然に汚れ、ちりがかかってしまう。
とうとう飴チョコの天使も、田舎の生活に飽きてしまった。
おはなしの始まりはここから
★この文章は3分で読めます
ちょうど、この店にきてから、一年目になった、ある日のことでありました。
菓子屋の店先に、一人のおばあさんが立っていました。
「なにか、孫に送ってやりたいのだが、いいお菓子はありませんか。」と、おばあさんはいいました。
「ご隠居さん、ここには上等のお菓子はありません。飴チョコならありますが、いかがですか。」と、菓子屋のおかみさんは答えました。
「飴チョコを見せておくれ。」
と、つえをついた、黒い頭巾をかぶった、おばあさんはいいました。
「どちらへ、お送りになるのですか。」
「東京の孫に、もちを送ってやるついでに、なにかお菓子を入れてやろうと思ってな。」と、おばあさんは答えました。
「しかし、ご隠居さん、この飴チョコは、東京からきたのです。」
「なんだっていい、こちらの志だからな。その飴チョコをおくれ。」といって、おばあさんは、飴チョコを三つとも買ってしまいました。
天使は思いがけなく、ふたたび、東京へ帰っていかれることを喜びました。
あくる日の夜は、はや、暗い貨物列車の中に揺すられて、いつかきた時分の同じ線路を、都会をさして走っていたのであります。
夜が明けて、あかるくなると、汽車は、都会の停車場に着きました。
そして、その日の昼過ぎには、小包は宛名の家へ配達されました。
「田舎から、小包がきたよ。」
と、子供たちは、大きな声を出して喜び、躍り上がりました。
「なにがきたのだろうね。きっとおもちだろうよ。」
と、母親は、小包の縄を解いて、箱のふたを開けました。
すると、はたして、それは、田舎でついたもちでありました。
その中に、三つの飴チョコがはいっていました。
「まあ、おばあさんが、おまえたちに、わざわざ買ってくださったのだよ。」と、母親は、三人の子供に一つずつ飴チョコを分けて与えました。
「なあんだ、飴チョコか。」
と、子供らは、口ではいったものの喜んで、それをば手に持って、家の外へ遊びに出ました。
まだ、寒い、早春の黄昏がたでありました。
往来の上では、子供らが、鬼ごっこをして遊んでいました。
三人の子供らは、いつしか飴チョコを箱から出して食べたり、そばを離れずについている、白犬のポチに投げてやったりしていました。
その内に、まったく箱の中が空になると、一人は空箱を溝の中に捨てました。
一人は、破ってしまいました。
一人は、それをポチに投げると、犬は、それをくわえて、あたりを飛びまわっていました。
空の色は、ほんとうに、青い、なつかしい色をしていました。
いろいろの花が咲くには、まだ早かったけれど、梅の花は、もう香っていました。
この静かな黄昏がた、三人の天使は、青い空に上ってゆきました。
その中の一人は、思い出したように、遠く都会のかなたの空をながめました。
たくさんの煙突から、黒い煙が上がっていて、どれが昔、自分たちの飴チョコが製造された工場であったかよくわかりませんでした。
ただ、美しい燈が、あちらこちらに、もやの中からかすんでいました。
青黒い空は、だんだん上がるにつれて明るくなりました。
そして、行く手には、美しい星が光っていました。
読了ワーク
思い出してみよう
- おばあさんに買われた飴チョコの天使は、どこへ行くことになりましたか。
- 3箱の飴チョコの天使は、それぞれどうなりましたか。
調べてみよう
- いつ食品に賞味期限や消費期限が表示されるようになったのでしょうか。
飴チョコの天使が田舎の駄菓子屋にやって来てから1年経ってしまいました。
“飴チョコ”は食品なので、賞味期限や消費期限が気になるところです。
実は、この物語が書かれた頃は、まだ賞味期限や消費期限の表示はありませんでした。
単語ピックアップ
1.隠居(いんきょ)
家業から離れて静かに暮らすこと。またその人のこと。
2.黄昏(たそがれ)
薄暗い夕暮れ時のこと。「誰そ彼は」という人の顔がよく見えない時間帯を意味している。
音読シートダウンロード
★この物語“飴チョコの天使③【後編】”の音読シートがダウンロードできます。
[download id=”1303″]
読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- 東京にいるおばあさんの孫のところ。
- 溝の中に捨てられたり、破られたり、犬のポチにくわえられた。