- グリム童話が好き。
- つっこみは他の追随を許さない。
- 人と意見を交換しながら読みたい。
このおはなしの作者
【作者】
グリム兄弟
・ヤーコプ・グリム(1785年~1863年)
・ヴィルヘルム・カール・グリム(1786年~1859年)
・ルートヴィヒ・エーミール・グリム(1790年~1863年)
【訳】
矢崎源九郎(1921~1967)
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おはなしの始まりはここから
★この文章は3分で読めます
とうとうお姫さまは泣き出してしまいました。無理もありません。
触るのさえ気味の悪い、冷たいカエルが、今度は、自分のきれいなベッドの中に寝たいなんて言うんですもの。
お姫さまはすっかりこわくなってしまったのです。
けれども、王さまは怒って、こう言いました。
「困っている時に、助けてくれたものを、後になって知らん顔するのは、いけないよ。」
そこで、お姫さまは、仕方なしに、カエルを二本の指でつまんで、二階のお部屋につれて行って、すみっこに置きました。
そうして、お姫さまがベッドのなかに横になりますと、またもやカエルがはい出して来て、
「ああ、くたびれました。わたしも、あなたのように、楽に寝たいですよ。さあ、わたしをそこにあげてください。もし、そうしてくださらないと、お父さまに言いつけますよ。」と、言いました。
それをきくと、お姫さまは本当に怒ってしまいました。
そして、いきなりカエルを掴みあげると、ありったけの力をこめて、壁に叩きつけました。
「これで、楽に眠れるわよ。ほんとに、いやらしいカエルだこと。」
ところが、どうでしょう。
カエルが下に落ちた時には、もうカエルではなくなって、美しい、やさしい目をした王子に変わっていました。
王子は、お姫さまのお父さまの計らいで、お姫さまのなかよしになり、お婿さまになりました。
そこで、王子は、自分の身の上話をしました。
その話によりますと、王子は、ある悪い魔女のために、魔法をかけられていたのですが、それをあの泉から救い出してくれたのはお姫さまだけだったということでした。
そして王子は、「明日は、二人でぼくの国へ行きましょう。」と、言いました。
その晩は、二人ともゆっくり休みました。
あくる朝、お日さまが二人を起こす頃、八頭だての白い馬にひかれた、一台の馬車がやって来ました。
どの馬も、頭に白いダチョウの羽をつけて、金のくさりでつながれていました。そして馬車のうしろには、若い王さまの家来が立っていました。
それは忠義者のハインリッヒでした。
この忠義者のハインリッヒは、ご主人がカエルにされた時、それはそれは悲しみました。
そしてその悲しみのあまり、じぶんの胸が破裂してしまわないようにと、鉄の輪を三本、胸にはめたのでした。
ところで、この馬車は、若い王さまを国へおつれする、お迎えの車だったのです。
忠義者のハインリッヒは、お二人を馬車に乗せてから、自分はまたうしろに乗りました。
そして、ご主人の助かったことを、心の底から喜んでいました。
馬車がしばらく走って行きますと、若い王さまのうしろの方で、なにかパチンと割れるような音がしました。そこで、若い王さまがうしろをふり返って、大声で言いました。
ハインリッヒ 馬車が壊れるぞ――
いえ いえ 王さま
馬車ではございません
あれはわたしの胸輪です
王さまがカエルになった時
泉に沈んでいかれた時
悲しみ嘆いて
はめた わたしの胸輪です
けれども、もう一度、またもう一度、パチンという音がしました。
その度に、若い王さまは、馬車が壊れるのではないかと思いました。
でもそれは、やっぱり、忠義者のハインリッヒの胸からとびちる胸輪の音でした。
それというのも、大事なご主人が助かって、これから幸せな毎日を送られることになったからですよ。
読了ワーク
思い出してみよう
- 怒ったお姫さまは、カエルをどうしてしまいましたか。
- 王子さまのお城に向かう途中、馬車で聞こえた「パチン」という音は何でしたか。
調べてみよう
- “計らい”の意味を調べてみましょう。また、どんな時に使えるか例文を考えてみましょう。
単語ピックアップ
1.仕方ない(しかたない)
自分ではもうどうすることも出来ず、その状況を受け入れるしか無い時に使う言葉。
2.婿(むこ)
①結婚した男性が妻側の家系に入ること②結婚してすぐの男性を指す言葉
3.身の上(みのうえ)
その人が置かれた状況(家庭環境や経済状況や人間関係など)のこと。境遇。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- カエルを掴みあげると、ありったけの力をこめて壁に叩きつけた
- (王子がカエルにされた時、悲しみのあまり胸が破裂しないようにと)忠義者のハインリッヒがはめた胸輪がとびちる音