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空の世界に帰れなくなってしまった女の話②

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やなかゆう
やなかゆう
鈴木三重吉作『星の女②』です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • 長めの話を少しずつ読みたい。
  • 長い話を集中して読む練習をしたい。
  • あまり知られていない話を読みたい。

このおはなしの作者

鈴木三重吉(1882年~1936年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

前回までのあらすじ

空の世界に帰れなくなってしまった女の話①【この文章は4分で読めます】鈴木三重吉作、「星の女」の第一話です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

おはなしの始まりはここから

★この文章は4分で読めます

そのうちに、ほしおんなには、つぎつぎにおとこ三人さんにんまれました。

ほしおんなはそのたちがおおきくなるのを、ただひとつのたのしみにしてらしました。

そのつぎには、可愛かわいらしいおんなまれました。

ほしおんなには、そのおんな可愛かわいくって可愛かわいくってたまりませんでした。

ある狩人かりゅうどまれたとおまちからはるばる使つかいがました。

狩人かりゅうどのおとうさまが病気びょうきにかかっているというらせです。

狩人かりゅうどはびっくりして、「わたしはこれからすぐにかなければならない。」といました。

ほしおんなはそれをいて、「でもそのながたび途中とちゅうで、わるけものにおころされになったらどうなさいます。」とってきました。

狩人かりゅうどほしおんななだめて、「そんな心配しんぱいけっしてない。わたしとうさまにはわたしよりほかには一人ひとりもないのだから、どうしてもわたしって、やすらかにじさせてあげなければ可哀想かわいそうだ。おとむらませたら、すぐにかえってる。どうぞどもたちと一緒いっしょっていておくれ。七日なのかったらかならかえってる。」といました。

すると一番上いちばんうえおとこが、「わたしとうさまと一緒いっしょって、お祖父じいさまをてきたい。」といました。

狩人かりゅうどは、「おまえはみんなと一緒いっしょうちにいて、泥棒どろぼうばんをしておくれ。」といました。

おとこは、「それでは、このもりさきまで一緒いっしょって、そこからかえってるの。そして、かあさまと一緒いっしょにおうちばんをするの。」といました。

狩人かりゅうどは、そのをつれてもりのはずれまでますと、「もうここからおかえり。これはうちのお部屋中へやじゅうかぎだから、おまえにあずけておく。」とって、かぎたばわたしました。

そして、「よくっておくが、どんなことがあっても、二階にかいちいさいお部屋へやへははいってはいけないよ。そのお部屋へや鍵穴かぎあなにこのきんかぎがはまるのだが、あそこだけは、けっしてけてはいけないよ。」と、幾度いくどってかせました。

おとこかったかったと、うなずきました。

狩人かりゅうどは、「では、なんにもこわいことはいから、おとなしくっておいで。」とって、わかれました。

おとこはまたもりとおって、おうちかえってますと、おかあさまが戸口とぐちって、しくしくいています。

おとこは、「どうしていているの? わたしかえったから、泥棒どろぼうてもこわくはないでしょう?」といました。

するとおかあさまは、「泥棒どろぼうなんかはちっともこわくはない。」といました。

「それではなにかなしいの?」

「だってとうさまは、もうここへかえってはいらっしゃらないんだもの。」

「ううん、そうじゃない。とうさまはじきかえるとおっしゃった。」

「それからわたしも、もうおうちかえらなければならないのよ。かえったら、もう二度にどてはられない。」

かあさまはこうって、またさめざめときました。

おとこは、「そんならわたしたち三人さんにんや、ちいさなあかちゃんをみんないてくの?」ときました。

ほしおんなは、そうわれるとびっくりして、「いやいや、わたしはもうどんなことがあってもかえりはしない。安心あんしんしておいで。あのあかぼうやおまえたちいて、どうしてかえってかれよう。」こうってなみだをふきました。

おとこはそれで安心あんしんして、みんなと一緒いっしょあそびました。

するとそのばんおとこは、そとつきかりのなかで、だれかがうつくしい小鳥ことりのようなこえで、しきりとなにっているのでめました。

いていると、そのとりのようなこえは、「蜘蛛くも梯子はしごりている、はやく帰っておいでなさい。」ということを、かなしいふしうたっています。

そばであかぼう添乳そえぢをしていたかあさまは、「ねんねんよねんねんよ。このわたしのルビーだものを、このいてはかえれない。」という意味いみうたいながら、あかぼう寝顔ねがおつめていました。

すると、そとからは、「そんなら二人ふたりでおかえりなさい。ルビーをいて二人ふたりで。」とうたいます。

かあさまは、しばらくだまっていました。そのうちに、そとこえは、また、

蜘蛛くも梯子はしごりている。おまえが七年ななねんいないとて、ほし二人ふたりいている。

と、またうたしました。あかぼうはふとましてしました。

かあさまは、そっとそのお背中せなかをたたいて、「ねんねんよ、ねんねんよ。かえかえれとったって、たまかざりの着物きものがない。」と、かなしそうにうたいました。

あかぼうはまたすやすやとねむりました。

それからしばらく、なんこえもしませんでしたが、やがてまたそとつきかりのなかから、「かぎをおさがしなさい。おまえ着物きものかくしてある、ちいさなお部屋へやきんかぎを。」とちいさなうつくしいこえうたいました。

おとこは、そのうたいているうちに、いつのにか、うとうととねむってしまいました。

そうするとそのゆめなかへ、二人ふたりうつくしいおんなひとて、「いいだから、二階にかいのあのお部屋へやけてください。そうすれば、おまえのおかあさまはもうきはしないから。」といました。

おとこあさめると、おかあさまにかって、「わたし昨夜ゆうべだれかがおかあさまにはやくおかえりおかえりとって幾度いくどうたったのをいた。」といました。

かあさまは、「おまえはゆめでもたのでしょう。」といました。そして、あとで一人ひとりでさめざめときました。

おとこは、たしかにけていていたのですから、もし本当ほんとうにおかあさまがかえってしまったらどうしようとおもい、一日いちにち昨夜ゆうべうたのことばかりかんがえてらしました。

空の世界に帰れなくなってしまった女の話③【この文章は5分で読めます】鈴木三重吉作、「星の女」の第三話です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

読了ワーク

思い出してみよう

  1. 遠い町から来た使いは、どんな理由で来ましたか。
  2. 狩人は何日経ったら必ず帰って来ると言いましたか。
  3. 星の女のお母さんが「おまえは夢でも見たのでしょう。」と言ったのは、何の話のことですか。

調べてみよう

  • 『謡』と『歌』の違いは何でしょうか。
やなかゆう
やなかゆう
元データでは『謡』と『歌』が混在していましたが、『歌』で統一しています

単語ピックアップ

1.弔い(とむらい)

①死を悲しみ、遺族を慰めること。②葬式

2.添乳(そえぢ)

添い寝した状態で、乳児に乳を飲ませること。

やなかゆう
やなかゆう
会話上だと、添乳(そえぢ)では伝わらないので、添い乳(そいちち)と言うことが多いかな。

音読シートダウンロード

★この物語“星の女②”の音読シートがダウンロードできます。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  1. 狩人のお父さまが病気で死にかかっていることを知らせるため
  2. 七日経ったら
  3. 男の子が昨夜、誰かがお母さまに早くお帰りお帰りと言って幾度も歌ったのを聞いたこと