村山籌子作『兎さんの本屋とリスの先生』です。
- かわいらしい世界観の話が読みたい。
- 心が温かくなる話が読みたい。
- 3歳以上の子どもに読み聞かせしたい。
兎さんの本屋とリスの先生はここから
★この文章は2分で読めます
あるところに、大変そそっかしい兎さんの本屋がありました。
お店に新しい本が届いたある日。
兎さんはフロックコートを着て、鼻眼鏡をかけ、ステッキを持って、本は小脇に抱えて(人間から見るとおかしいですが、兎の本屋さんはこんなものです)売りに出掛けました。
森の入口に来ると、リスさんに会いました。
ひげを生やし、とても賢そうに見えるリスさんだったので、きっと本を買ってくれるだろうと思った兎さんは「リスさん、本を買って下さい。私は立派な本屋さんです。」と言いました。
フロックコートを着て、鼻眼鏡をかけて、ステッキをついている兎さんを見て、リスさんはなるほど立派な本屋さんだと思いました。
リスさんが「僕は医科大学の先生をしています。ぜひ本を買いたいのですが、あいにく今はお金を持っていません。家までついて来て下さい。」と言うと、兎さんは大喜びでリスさんの家へついて行きました。
リスさんの家は遠く、到着した頃にはもうすっかり暗くなっていました。
門口まで来ると、リスさんは家へ入って行き、お金を持って来ると兎さんに本の代金を払いました。
その時ちょうど、6時を知らせる鐘が鳴り、あたりがパッと明るくなりました。
リスさんの村では、夕方の6時になると電気が点くのです。
リスさんは今買った本を、英語やらドイツ語やらロシア語やらの辞書を積み上げている机の上で広げました。
本の表紙には「小学一年生が読む本」と書いてありました。
リスさんはびっくりして「僕は医科大学の先生なのに!!」と言って怒りました。
そして、兎さんを追い掛けていき、追いついたリスさんは本を突き返しました。
兎はとても恥ずかしくなって、こう言いました。
「あなたはお子さんがいますか?」
リスさんは答えました。
「小学一年生の子どもがひとりいますよ。」
「それでは、この本をそのお子さんにあげて下さい。お金はいりません。」
そう言うと兎さんはお金をリスさんに返し、逃げるように帰っていきました。
その様子を見たリスさんは兎さんのことが気の毒になったので、次の日お金を届けに兎さんの本屋へ出掛けていきました。
到着すると、兎さんはベッドの中でうんうん唸っていました。
なぜかと言うと、昨夜あんまり急いで帰っていったので、小さな川に落っこちて指を怪我してしまったのです。
リスさんはお医者さんですから、兎さんの指にお薬を塗ってあげました。
それから兎さんはリスさんと大変仲良くなり、兎さんの本屋に新しい本が届くと、いつでも少し安くして売ってあげたそうです。
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読了ワーク
思い出してみよう
- 本屋さんは何の動物でしたか。
- 本屋さんはリスさんとどこで会いましたか。
- リスさんは何の先生だったでしょう。
- リスさんは買った本を見ると怒ってしまいました。どうしてでしょう。
医科大学の先生をしているリスさんにはふさわしくない本だったね。
調べてみよう
- “そそっかしい”の意味を調べてみよう。
- フロックコートとはどんなコートでしょう。
- 医科大学って何を教えてくれる学校かな。
- 怪我した本屋さんにリスさんが塗った薬。大元の作品では“ヨードチンキ”でした。ヨードチンキとはどんな薬でしょう。
単語ピックアップ
1.小脇(こわき)
わきのこと。また、わきに関するちょっとした動作を表す語。
2.気の毒
他人の不幸や苦痛に心を痛めること。
3.唸る(うなる)
長く引いた低い声を出すこと。苦しみや痛み・怒りや力を入れる時に発声されることが多い。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- 兎
- 森の入口
- 医科大学の先生
- 小学一年生が読む本だったから。