- SF小説やドラえもんが好き。
- あまり知られていない作品を読みたい。
- 5歳以上の子どもに読み聞かせしたい。
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前回までのあらすじ
おはなしの始まりはここから
★この文章は2分で読めます
「なぜ――なぜアトランチス大陸は、海の下に沈んでしまったの。」
三四郎は、あえぎながら、たずねた。
「月のひとつがなくなったら、地球の上の潮のみちひきが急にかわったのだ。月の海水に働く引力によって、潮のみちひきが起こり、また海の水の高さがきまるのだ。月が一つなくなったために、アトランチス大陸のところでは海の水位があがって、大陸をのんでしまったのだ。自然の力は、大きいもんだね。」
「人間の力なんて小さいですね。」
「そうもいえまい。だってアトランチス大陸は亡んだが、それから一万年以上たって今はどうであろう。このとおり人間はいたるところにふえ、世界は栄えているのだ。」
「そうだ。いつの間にか人間がふえた。」
「文化も進んだ。アトランチス時代には、思いもつかなかったことだが、今は人類は空を飛ぶことも出来る。また原子力を使って、大きな土木仕事をおこしたり、宇宙旅行をすることも、やがて出来るのだろう。もしアトランチス時代に飛行機があり、原子力を使うことを知っていたら、多数の人が、他の大陸へ渡って生き残ったかもしれない。――自然の力も大きいけれど、たゆまず努力していく人間の力もまた、ばかにならないものだ。」
「敗戦日本には今一台の飛行機もないけれど、わたしたちと同じ同胞であるアメリカ人やイギリス人やソ連人などは、たくさんの飛行機を持っている。だから人類全体として考えると、わたしたちはやっぱり飛行機をうんと持っていることになるんだ。そうですね、おじさん。」
「そういう考え方をしてもいいね。日本人がもっともっとりっぱな行いをするようになって、世界の人々から信用されるようになったら、そのときには日本人にも飛行機をのりまわすことが許されるだろう。悲観することはない。」
「じゃあ、原子力を使って、宇宙旅行をする日もやがて来ますか。」
「日本人に対する信用が回復すれば、そういう日も来るにきまっている。」
「うん。そんなら、いいなあ。じゃあ、ぼくたちは今からうんと勉強をしておかなくてはね。さあたいへんだ。急に仕事がふえたぞ。ぐずぐずしていられないや。」
「三四郎君。君は今日うちへ来たとき、生きているのがいやになったといってたが、今はどうだね。」
「おじさん。あんなことは、もう思っていませんよ。それよりも、ぼくはうんと長生きをしたいと思うようになりました。うんと長生きをして、われらの世界同胞のために、すばらしい発明をしたり、住みよい世界をつくったり、その他することがうんと増えましたよ。」
「それはよかった。きみの考えが変わって……。」
「今ぼくらは苦しいのだの、つまらないのだの思っているけれど、アトランチス人の最後のことを思うと、ぼくらは元気を出さなくてはならないと思いました。」
「それを聞いたら、あの人たちも浮かばれることだろう。」
読了ワーク
思い出してみよう
- アトランチス大陸は結局どうなってしまいましたか。
- 最初「生きているのが嫌になった。」と言っていた三四郎君の考えはどのように変わりましたか。
調べてみよう
- 『亡ぶ』と『滅ぶ』の違いは何でしょうか。
- “ソ連”とは、「ソヴィエト社会主義共和国連邦」の略ですが、今は存在していません。“ソ連”とはどこにあったのか、調べてみましょう。
単語ピックアップ
1.同胞(どうほう)
2.信用(しんよう)
3.悲観(ひかん)
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