「小説なんて、ただの娯楽。」「知識を身につけて生かすための本を読むならわかるけど、小説を読む意味って?」
そう思ってしまう気持ち、分かります。
なぜなら、私自身もそう考えていた時期があったからです。
ですが、ただの娯楽として考え、小説からえられるメリットを逃してしまったら、なんともモッタイナイ話ではないでしょうか。
そもそも小説は知識を身につけることを目的として作られていませんが、様々なメリットと共に計り知れない可能性を秘めています。
この記事では、小説で得られる8つのメリットについてまとめました。
この記事を読むことで、小説で得られるメリットが分かり、小説に対する考え方が変わります。
- 小説を読む意義について知りたい人。
- 小説をただの娯楽と思い、避けていた人。
私が小説を読み始めた理由
しばらく小説に対し、読む意味を見いだせなかった私が小説を読み始めた理由。
それはあまり人に堂々と言えるような動機ではないのですが、ずばり「好きな人が小説をよく読む人だったから」です。
私が恋したその人は、小説をよく読む人で、SNSに読んだ本の感想を載せていました。ちなみに、理数系のSEらしく?森博嗣の小説を好んで読んでいました。
一方、当時の私は自己啓発書やハウツー本ばかり読んでいて、小説は二の次、三の次でした。でも「自分はこの小説家の本が好きなんだよね」と言える人に憧れの気持ちはありました。
ふと、もし自分がそうなれたら、気になるあの人と小説の話で盛り上がれるのではないだろうか・・・と考えたのです。
ひとまず、自分よりも小説を読む兄に、何かオススメの小説はないか尋ねてみると、兄から『伊坂幸太郎』を勧められました。それから、私は素直に伊坂幸太郎作品を手当たり次第に読み始めました。すると、とても、とても面白く、すっかり伊坂幸太郎作品の魅力に取りつかれたのです。
彼の作品は伏線回収が心地良く、まるでパズルのピースがきっちりはまるようなスッキリとした読了感がありました。本を読み終わったら早速感想をSNSにアップ。心は気になる彼に向けて「私は小説をよく読む女ですよアピール」という名のアウトプットをする。
目標、『気になる彼と推しの小説について語れる女に私はなる!!』
アウトプットもして、記憶に残る読書も完璧。
結果、その彼は今では私の夫です――とは、ならなかった。
いろいろありましたが、何も進展せず。
結局私の伏線は回収されませんでしたが、小説を読む女にはなれました。
小説を読む8つのメリット
小説には、「ただの娯楽」と片付けてはいけない、8つものメリットがあります。
それぞれ説明していきます。
①脳が活性化し、賢くなる
以前、こちらの記事(『読書習慣を手に入れて今度こそなりたい自分になる方法まとめ』)にも記載した通り、本を読むことで思考や創造性を担う部分である脳の前頭前野が活性化されます。また、読む本のジャンルによって、脳の働きが活発になる領域が異なるという研究報告もあるので、様々なジャンルの本を読むことは脳全体を活性化させることにつながると言えます。
そして小説は、ドキドキしたり、ワクワクしたり、読み手の心を揺さぶります。
その時脳内では、ドーパミンやアドレナリン、エンドルフィンといった脳内物質が分泌され、神経細胞同士のつながりが強化されます。それらの脳内物質は記憶する力を高める働きがあるので、物語の情景と共に語彙や多彩な言葉の言い回しも一緒に記憶できます。
悲しい失恋の記憶を、なかなか忘れることができないというのも、脳内物質の影響によるものだったりします。
②想像力が豊かになる
絵のない小説を読んでいると、文脈から「これはどんな場面なのだろう」とその情景を想像します。
そのように頭を使っていると、だんだんと想像力が鍛えられていきます。
想像力が鍛えられると、例えば人から指示を受けるような場面でも、発せられる言葉をすぐにイメージが働いて理解することも可能です。
さらに、想像力を駆使することで、相手の立場に立って物事を考えることができるので、あらゆる場面において常に配慮のある行動がとれることでしょう。
③共感力が磨かれ、コミュニケーション上手になる
映画やドラマの登場人物が、仲間を助けるために命がけで行動したり、過去の悔しい思いを糧に鍛錬を重ねるシーンに胸が熱くなる。
これは、登場人物に感情移入しているからこそ起こることです。
カナダ・トロント大学の心理学者であるキース・オートリー氏とレイモンド・マー氏の研究では、小説(フィクション)の読書量が多ければ多いほど、共感力が高いことが明らかにされました。(なお、この結果はノンフィクションでは見受けられなかったとのこと。)
人と人との円滑なコミュニケーションにおいて、「共感」することは重要な要素。
なぜなら、共感することは人の社会性の根幹をなす機能だからです。
全く共感が生まれない相手とは、良好な人間関係を築くのは困難です。
しかし、共感できる相手だったら、心を許すことができるのではないでしょうか。
つまり、小説を読むことで登場人物に感情移入し、自然と共感力が磨かれる。
そして同時に、社会性を養うことにもつながるのです。
④読解力が高まる
小説を読むことで、ドキドキ・ワクワクした気持ちを感じながら、楽しく読解力を高めることができます。
「読解力」とは、文章の内容を読み理解する力のことです。この読解力が無いと、本の内容を理解することができないのはもちろんのこと、人の話さえも理解できません。
私が小学一年生になったばかりの頃、先生の言っていることが頭に入ってこなくて、友達に「次、どうするんだっけ?」といちいち聞いていた記憶があります。今振り返って考えてみると「あれは読解力が足りてなかったんだな」と思います。
その頃の私は、ほとんど文章という文章、絵本ですら読んでいなかったので、先生の話が入らないほど読解力に乏しかったのは頷けます。そしてその後、自ら本を読むようになって、いろいろと理解が進みました。
読解力が低い人というのは、そもそも文章に触れる機会が少ない傾向にあります。
読解力を身につけるためには、まず文章をよく読むことが基本です。たくさんの文章に触れることで、語彙力も鍛えることができます。
⑤文章力が上がる
小説を読むと、楽しみながら語彙力を鍛えることができるので、結果文章力も上げることができます。
小説は文字ばかりの本ですが、文字を通して読者に、その場面を思い浮かべてもらわなければなりません。
例えばこちらのシーン。
子どもの狐は遊びに行きました。
真綿のように柔かい雪の上を駈け廻ると、雪の粉が、しぶきのように飛び散って小さい虹がすっと映るのでした。
すると突然、うしろで「どたどた、ざーっ」と物凄い音がして、パン粉のような粉雪が、ふわーっと子狐におっかぶさって来ました。
これは、新美南吉作『手袋を買いに』の1シーンです。子狐が雪と戯れている様子が文字だけでひしひしと伝わってきます。また、雪のパウダースノー感も伝わってきます。
小説を読むことで、あらゆる表現の仕方や言葉を学ぶことができるので、このような人に想像させる文章も書けるようになります。
実在する人物を例に挙げるとすると、お笑いタレントの又吉直樹氏。
又吉氏は芥川賞を受賞した小説家でも知られますが、小説家である以前に、活字が躍り出す夢を見るほどの「読書家」であることも注目すべきポイントです。
⑥ストレス解消になる
本を読むことでストレス解消になることは、こちらも以前記事にした(「読書習慣を手に入れて今度こそなりたい自分になる方法まとめ」)に記載した通りです。
英国・サセックス大学のデイビット・ルイス博士の実験で、被験者にストレス解消効果があるといわれる「読書」「音楽鑑賞」「1杯のコーヒー・紅茶」「散歩」「TVゲーム」をそれぞれ試してもらったところ、読書が最もストレス解消効果があると証明されました。
この実験のすごいところは、『たった6分間の読書で60%もストレスが軽減された』ということ。6分間で60%もストレスが軽減されるのであれば、仕事の休み時間中でも気軽にできます。
さらに読書のストレス解消効果を上げるには、「静かな場所で本を読むこと」「ストーリーを理解し、登場人物の気持ちに寄り添うこと」が大切だと言います。
したがって、小説を読むことはストレス解消に有効な方法なのです。
⑦人生を変える力がある
あなたが選んだ一冊の小説が、人生を変えることになるかもしれません。
これは決して、大げさなことではありません。
『明日の自分が確実に変わる10分読書』の著者である吉田裕子氏は、ある一冊の本をきっかけとして、自分の人生を切り拓いてきた人物の一人です。
東京大学に現役合格し、教養学部超域文化科学科を首席で卒業した吉田氏は、本を読むことで読解力がアップし、勉強にも生かすことができたと言います。
そして、そんな吉田氏を読書好きに至らしめたのが、小学生の時に読んだエレナポーター著『少女パレアナ』でした。
この本に登場するパレアナは孤児で、気難しい叔母さんと一緒に生活をしています。パレアナは亡き父との約束である「喜びの遊び」に従って、どんな物事にも喜びを見出していきます。気難しい叔母さんも、そんな明るい彼女と接していくうちに、次第に心を開いていきます。そしていつしか、パレアナの明るさは、街全体にまで広がっていきます。
吉田氏はこのストーリーに感動して以来、どんな困難に直面しても、パレアナのように明るく前向きに考えて乗り越えるスキルを身につけられたのだそうです。
さらに吉田氏は、元々なんでも物事を悲観的に捉えるクセがあったそうですが、パレアナを読むことで悲観的に捉えるクセが矯正されたとのこと。
それは、パレアナを読むことで、思いがけず“認知療法”になったのだと言います。
(“認知療法”とは、成長する過程で身につけてしまった被害妄想などの道理に合わない思考のクセを修正してしていく心理療法のこと)
このように、一冊の本、物語、小説には、人生を変える力があると言えるのではないでしょうか。
⑧他人の生活を疑似体験できる
小説を読むことで、普段は体験できないような生活を疑似体験できます。
普通に生活していて、思っていても実現不可能・困難なことはいろいろとあります。
例えば、既婚者女性の「もし、今の夫じゃなくて、元彼と結婚していたら・・・」「もっといろんな人と付き合ってみて結婚していたら・・・」という思い。
これは私も思ったことがあります。
それは私が一人目を出産した時のこと。ふと、元彼のSNSを検索して見てしまったことがあります。
その人は私に「自分は結婚には興味がない」「多分これからずっと結婚しないと思う」と言っていました。そんな人が、なんと私よりも先に結婚し、既に子どもまでいたのです。
彼と付き合っていた当時、私は20代のなるべく若いうちに結婚することに憧れていました。しかし、彼は結婚に興味ないと言うし、その上、互いの「好き」には温度差がありました。認めたくはないですが、彼の方が私に対しどことなく冷めていました。
だから私は、悩んだ末に彼と別れる道を選びました。その後、いろいろあって、私は婚活してギリギリ20代で結婚。
出産も経験して幸せの絶頂のはずでした。ですが、その時の私は「もし、元彼と結婚していたら」という気持ちに囚われていました。というのも、その頃から夫に対しての不満が蓄積されていたんですね。
そして、「結婚に興味ない」と言っていた人が先に結婚生活を送っていたことが分かってしまった。それから、なんとも言えない敗北感に苛まれてしまいました。しかもその敗北感は、先に結婚した彼に対してではなく、彼と結婚することができた相手に対してでした。
産後のホルモンバランスが乱れていたことも影響していたと思うのですが、ものすごく気持ちが落ち込みました。
もしもあの時、別れていなかったら、もしかしたら元彼と結婚できていたのだろうか。元彼と結婚していたら、どうなっていただろう・・・。今更そんなことを考えても仕方がないことばかり浮かんできました。
そんな時に出会った本が山本文緒著『ブルーもしくはブルー』です。
高収入でスマートな男性と結婚し、都心の高級マンションで人から羨まれる暮しを送る佐々木蒼子。しかし夫には愛人、自身にも若い恋人がいて夫婦の関係は冷めていた。恋人と旅行の帰途。偶然、一人で立ち寄ることになった博多の街中で昔の恋人・河見を見かける。彼に寄り添っていたのは、なんと自分そっくりのもう一人の「蒼子」だった。「ドッペルゲンガー?」名前も顔も同じなのに、全く違う人生を送る2人の蒼子。互いに言いようのない好奇心と羨みを抱いた2人は、1か月だけ期間限定で入れ替わり生活してみることにする。しかし、事態は思わぬ展開となって……!
この本を読んでだいぶ落ち着きを取り戻し、私自身の夫に対する考え方も改めた私は、もう二度と元彼のSNSは見ないと誓いました。そして、相手の幸せを願いながら今度こそ永遠にサヨナラできました。
このように、実際に実現困難なこと、実現しようとすると大変なことになりかねないことも、小説を通じて疑似体験し、冷静さを取り戻すことも可能なのです。
小説は価値のある娯楽
小説は確かに娯楽のひとつ――ではありますが、小説を読むことで、人が生きていく上で大切な力を得られることがわかりました。
「娯楽だから無意味」なのではなく、「価値のある娯楽」なのですね。
当ブログ『おはなしコレクション』では、著作権の切れた文学作品を5分以内で読めるよう調節し、掲載しています。
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