- グリム童話が好き。
- つっこみは他の追随を許さない。
- 人と意見を交換しながら読みたい。
このおはなしの作者
【作者】
グリム兄弟
・ヤーコプ・グリム(1785年~1863年)
・ヴィルヘルム・カール・グリム(1786年~1859年)
・ルートヴィヒ・エーミール・グリム(1790年~1863年)
【訳】
矢崎源九郎(1921年~1967年)
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前回までのあらすじ
おはなしの始まりはここから
★この文章は4分で読めます
カエルは、お姫さまから約束してもらいますと、頭をひっこめて、水のなかにもぐっていきました。
それから、しばらくすると、また浮かびあがってきました。
見れば、たしかに、金のまりを口にくわえています。カエルは、そのまりを草のなかにぽんと放り出しました。
お姫さまは、じぶんの美しいまりが戻って来たのを見ますと、うれしくってうれしくって、それを拾いあげるなり、そのまま、とんで行ってしまいました。
「待ってください、待ってください。」と、カエルは大声でさけびました。
「わたしも一緒につれてってください。わたしは、そんなに走れないんです。」
けれども、カエルがうしろの方から、いくら大きな声で、ギャア、ギャア、鳴いても、喚いても、なんにもなりませんでした。
お姫さまはカエルがさけぶ声には耳もかさず、いそいでお城へかけて行きました。そして、かわいそうなカエルのことなんか、すぐに忘れてしまいました。
ですから、カエルのほうは、もとの泉のなかに、すごすごと帰っていくよりほかはありませんでした。
そのあくる日のことでした。
お姫さまが、王さまをはじめ、ご家来の人たちと一緒に、みんなで食卓について、金のお皿でごちそうを食べていますと、なにやら、ピチャ、ピチャ、ピチャ、ピチャ、と、大理石の階段をはいあがってくる音がしました。
そして、上まであがりきりますと、トントンと戸をたたいて、「お姫さま、いちばん下のお姫さま、どうかこの戸を開けてください。」と、大きな声で言いました。
そこで、お姫さまはかけていって、誰が来たのかしら、と思いながら、戸を開けました。
と、おどろいたことに、戸の外には、昨日のカエルが座っているではありませんか。それを見るなり、お姫さまはバタンと戸を閉めて、いそいで食卓の席にもどりました。
でも、胸のなかは心配で心配でたまりません。
王さまは、お姫さまの胸のどきどきしているのを見て、「姫や。なにがこわいんだね。戸のそとに大入道でも来て、おまえをさらって行こうとでもしているのかい。」と、たずねました。
「あら、ちがうわ。」と、お姫さまはこたえました。
「大入道なんかじゃないの。いやらしいカエルなのよ。」
「そのカエルが、おまえになんの用があるんだね。」
「それはね、おとうさま、昨日、あたしが森のなかの泉の側に座って、遊んでいたら、金のまりが水のなかに落ちてしまったの。それで、あたしが泣いていると、カエルが出てきて、まりを取ってきてくれたの。そのとき、カエルがあんまり頼むものだから、じゃあ、お友だちにしてあげるわって、約束しちゃったのよ。だって、まさかカエルが、水のなかから出てこようとは思わなかったんですもの。それがね、今、あのとおりやってきて、中へ入れてくれって言ってるのよ。」
そのとき、また戸をたたく音がして、大きな声がしました。
いちばん下のお姫さま
どうか開けてくださいな
すずしい泉のかたわらで
きのう約束したことを
あなたは忘れちゃいないでしょう
いちばん下のお姫さま
どうか開けてくださいな
それを聞きますと、王さまは言いました。
「いちど約束したことは、かならず守らなければいけないよ。さあ、早く行って、開けておやり。」
お姫さまは立って行って、戸を開けてやりました。
とたんに、カエルはピョンと飛び込んで来て、それからずっとお姫さまの足もとにくっついて、いすのところまで来ました。
カエルはそこに座り込んで、「わたしもそのいすの上にあげてください。」と、言いました。
ところが、お姫さまは、ぐずぐずしていたものですから、とうとう王さまから、そうしておやり、と言われてしまいました。カエルはいすの上に乗せてもらいますと、今度は、食卓の上に乗せてくれ、と言い出しました。
そうして、食卓の上に乗せてもらいますと、「その食卓のお皿のものを、ふたりで一緒に食べられるように、もっとこっちへよこしてください。」と、言いました。
お姫さまはそのとおりにしてやりましたが、嫌で嫌でたまらない様子です。
カエルはいかにもおいしそうに食べていましたが、お姫さまの方は、ひと口ごとに、のどにつかえるような思いでした。
カエルは食べるだけ食べてしまいますと、「ああ、お腹がいっぱいになって、くたびれてしまいました。さあ、わたしをあなたのお部屋へつれて行ってください。そうして、ふたりで寝られるように、あなたのかわいらしい絹のベッドをきちんと直してください。」と、言いました。
読了ワーク
思い出してみよう
- 金のまりを受け取ったお姫さまはどうしましたか。
- あくる日、カエルは大理石の階段をあがってやって来ました。何のために来たのでしょうか。
調べてみよう
- 大理石とはどんな石でしょうか。調べてみましょう。
音読シートダウンロード
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- 金のまりを拾いあげるなり、そのまま行ってしまった。
- お姫さまとの約束のため。