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でたらめなお経が思わぬ幸運をもたらした話③

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やなかゆう
やなかゆう
宇野浩二作『でたらめ経③【後編】』です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • コントみたいなゆかいな話を読みたい。
  • 4歳以上の子どもに読み聞かせしたい。

このおはなしの作者

宇野浩二うのこうじ(1891年~1961年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

前回までのあらすじ

おばあさんからお経の文句を教えてほしいと頼まれた旅人。

お経の文句など知らない旅人は困ってしまい、なんとかすきをうかがって逃げようと考える。しかし、真面目で正直なおばあさんを前にすると逃げる気持ちも起きない。

覚悟を決めた旅人は、お経らしい節を付けた出鱈目なお経を唱え始める。

それを聞いたおばあさんは大喜び。旅人のまねをして唱え始める。

旅人は可笑しくてたまらなくなり、そっと逃げて行く。

でたらめなお経が思わぬ幸運をもたらした話②【この文章は3分で読めます】宇野浩二作、「でたらめ経」中編です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

おはなしの始まりはここから

★この文章は3分で読めます

そのばんのことでした。

そういう正直しょうじきなおばあさんのいえのことですから、べつよるになっても、戸締とじまりをするようなことはありません。

ただ、ふゆさむかぜときめておき、なつ暑苦あつくるしいときはなしておく、といったふうでした。

そのばん、となりむらからやまえてて、べつのとなりむらほうかわわたってこうとする、二人連ふたりづれのおとこがこのおばあさんのいえまえとおりかかりました。

この二人ふたり泥棒どろぼう商売しょうばいで、これからかわして、こうのむらくと夜中頃よなかごろになりますから、そこでひと仕事しごとをするつもりだったのです。

が、泥棒どろぼうのことですから、ふと、このおばあさんのいえまえとおりかかると、はなしになっていて、目星めぼしいものはなさそうですが、「きがけの駄賃だちんだ」というかんがえで、ひとかせぎしようとおもいました。

のぞいてますと、なか一人ひとりのおばあさんが仏壇ぶつだんまえすわっているだけで、そとひとのいる気配けはいがしません。

そこで泥棒どろぼうこうおつに、「おい、おまえ、ここでばんをしていてくれ。こんなさびしいところだから、ひととおりかかるようなことはないだろうが、もしこのいえものそとているやつがあって、そいつがかえってたりするようなことがあるとことだから。おれ一人ひとり沢山たくさんだ。」といいました。

そのときいえなかではおばあさんが、昼間旅ひるまたびひとからならったおきょうはじめるところでした。

香炉こうろや、花立はなたてや、花立はなたてや、香炉こうろや……。」

そこへ、泥棒どろぼうこうがそッとおばあさんにえないようにいえなかしのんできました。

ところがびっくりしました。

ねずみ一匹御入来いっぴきごにゅうらい……。」とおばあさんがいっています。

ひとのことをねずみだというばかりでなく、えるはずがないのにひとはいってたのがえるのかしら、と泥棒どろぼうおもって、気味きみわるくなったものですから一度表いちどおもてかえそうとしますと、おばあさんのおきょうはつづいて、

「かとおもったら、すぐにげてしまったア……。」

泥棒どろぼうこうはもうびっくりしてしまって、あわてておもてしてっていた相棒あいぼうに、「どうも気味きみわるうちだよ。」といいました。

「たしかにいえなかにはおばあさんが一人ひとりしかいないんだが、どうも気味きみわるいおばあさんだよ。たのむから、おまえ一緒いっしょっててくれないか。」

そこで、今度こんど二人連ふたりづれでそッといえなかしのみました。

しのあしあるきながら、泥棒どろぼうこうおつに、「あのおばあさんだよ。ああしてこういていながら、うしろにがあるんじゃアないか、とおもうんだ。」とみみそばでいっているときに、「今度こんど二匹連にひきづれで、なんだか相談そうだんをしながら、ちょろちょろと御入来ごにゅうらい。」チンとかねたたきながらおばあさんがおきょう文句もんくつづけました。

泥棒どろぼうはそれが出鱈目でたらめおそわったおきょうんでいるのだとはがつきませんから、びっくりして、あわててかえそうとしますと、

「ところがおどろいて、大急おおいそぎでげてかえったア。」「チン」とおばあさんはおきょうをつづけました。

それを背中せなかきながら、二人ふたり泥棒どろぼう夢中むちゅうおもてげてました。

「ああ、おどろいた。あのおばあさんはなんだろう。きっとものなにかだよ。うしろにがあるんだよ。しかもひとのことをねずみだなんて……畜生ちくしょう!」といいいながら、二人ふたり泥棒どろぼうかわきしのところまで、うしろもないで、いきらしてげてました。

そして、ほッとかお見合みあわして、ためいきをつきました。

おばあさんは、自分じぶんらないに、そんなことがあったとはすこしもらないものですから、泥棒どろぼうかえったあとでも、「折角教せっかくおそわったおきょうだ。よくおぼむまで、何度なんどもやっておこう。」とひとごとをいいながら「香炉こうろや、花立はなたてや、花立はなたてや、香炉こうろや……。」

とまたはじめからさらいしました。

が、今度こんどはもうねずみ泥棒どろぼうませんでした。

読了ワーク

思い出してみよう

  • おばあさんの家に忍び込んだ泥棒でしたが、結局何も盗まずに逃げて行ってしまいました。それはなぜでしょうか。

調べてみよう

  • 『坐る』と『座る』の違いは何でしょうか。

単語ピックアップ

1.目星(めぼし)

目当て。目標。

2.駄賃(だちん)

ちょっとした労力に対して与える金品等の礼。特に子どものお手伝いに対するごほうびの事を指して言う。

3.出鱈目(でたらめ)

思いつくまま、勝手なことを言ったり行ったりするさま。いい加減なこと。

音読シートダウンロード

★この物語“でたらめ経③【後編】”の音読シートがダウンロードできます。
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  • 泥棒達の方を見ているわけではないのに、泥棒達のことを知っているかのようにしゃべっていて気味が悪いから。