- クリスマスにちなんだ、楽しい話が読みたい。
- 3歳以上の子どもに読み聞かせしたい。
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★この文章は3分で読めます
よし子さんのお家も、あすは、クリスマスです。
毛並みのつやつやした、まっ黒いネコは、夜どおし、煙突のてっぺんにすわって、サンタクロースのおじいさんが、このお家をまちがいなく見つけてくれればいいがと、黄色い目をひからせて、見つめていました。
よし子さんは今夜は、きっと、おじいさんが、あたしのほしくてほしくてたまらない、小さな金のくびかざりを持って来てくれるにちがいないと言って、おねんねをしました。
イヌは、家の中の煙突の下を、ふさふさしたしっぽで、きれいにお掃除をしました。
せっかくサンタおじいさんが、金のくびかざりをもって煙突から下りて来ても、そこがあまりきれいでなくては、いやな気持ちになって帰ってしまうかもしれないからです。
「オウムさん、あなたはこのクリスマスに、よし子さんには何をしてあげるの。」
と、イヌは、籠の中のオウムに声をかけました。
「あたしは、お目ざめの歌を歌ってあげるわ。」と、オウムは言いました。
「それは毎朝のことで、別にめずらしくもないじゃないの。」
「でも、いつもの歌とはちがうのよ。あたしが、さっき、つくったばかりの、それはいい歌なんですの。」と、オウムは言いました。
「ふふん、歌なんか、歌ったって、クリスマスの役には立たないや。ごらんよ、ぼくたちのやってることを。ネコがこの上にいて目を光らせていなかったらこの家は空から見えないし、僕がここをきれいにしておかなければ、おじいさんは入って来やしないよ。僕たちのすることは、こんなものだ。」
イヌは、しっぽを振って、大いばりにいばりました。
「あたしだって、何かしたいのだけれど、でも、籠の中にいるんですもの。あたしには歌を歌うことしか出来ないわ……。今に、いい節がつくんだけれど。」
オウムは、さびしそうに、小さな声でこう言いました。
イヌは、それには、返事もしないで、「では、僕は、おじいさんが来るまで、一寝入りするんだ。」
こう言って、ごろりと、横になってしまいました。
お部屋の中はしいんとして、夜が、だんだんふけていきました。
しばらくすると、屋根の上に、みしみしという足音が聞こえました。
イヌは、はっと目をさまして聞き耳を立てました。
オウムはずっと、ねないで、まっていたのです。
「掃除はきれいに出来たかな。」
サンタクロースのおじいさんは、こう言いながら、えんとつの上にいたネコを背中にしょって、すらりと、お部屋へ下りて来ました。
そして、ポケットから、かきつけを出して、「ええッと、よし子さんは何がほしいのだったかな。」と、言い言い読みかえしました。
「あたしの歩き人形にはお靴を二つ。
白い熊ちゃんには毛皮の帽子を。
ネコにはちりちりと鳴る鈴を。
イヌにはぴかぴか光る首輪を一つ。
オウムにはあたらしい歌のふしを
それから、あたしには……」
サンタおじいさんは、そこでつまってしまいました。
暗くて字がよく見えないので、かきつけを眼のそばによせて、
「はてな、よし子さんのほしいものは何だったっけな。」と、おじいさんは考えこみました。
「小さな金のくびかざりです。」と、イヌとネコとオウムとが、一度に言いました。
「小さな金のくびかざり? おお、そうだった。昨夜ちゃんと、つくって……それから、どうしたっけな。」
おじいさんは、少しあわてて、ポケットというポケット…円…いポケット、四角なポケット、上のポケット、下のポケットを……さがしまわしました。
でも、くびかざりはどこにも見つかりません。
「おやおや、どうしたんだろう。もって来ないはずはないのだが……はてなはてな。」
おじいさんは、しきりに首をひねりました。
イヌとネコは心配して顔を見合わせました。
自分たちのもらうものはどうでもいいけれど、だいじなお嬢さまが、あれほどほしがっていらっしゃる、くびかざりですから、どうしてもさがし出してもらわなければなりません。
おじいさんは帽子もとって見ました。
靴もぬいで見ました。
しかし、どこにもありません。
読了ワーク
思い出してみよう
- 毛並みのつやつやした、真っ黒いネコは夜どおし、どこにすわって何をしていたでしょうか。
- イヌはサンタクロースのおじいさんが来る前に、何をしていましたか。
調べてみよう
- 『籠』と『篭』の違いは何でしょうか。
- 『歌』と同じ読みの漢字は他に『唄』と『詩』があります。これらの違いは何でしょうか。
音読シートダウンロード
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- 煙突のてっぺんにすわって、黄色い目をひからせていた。
- 家の中の煙突の下を、ふさふさしたしっぽできれいにお掃除をしていた。