悲しい話 PR

会えると期待して行ったのに悲しい現実を突きつけられる話②

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やなかゆう
やなかゆう
小川未明作『青い星の国へ②【後編】』です
このおはなしはこんな人にオススメ
  • 悲しいけれど情緒豊かな美しい話が読みたい。
  • リラックスできるような話が読みたい。
  • おやすみ前の読書にぴったりの話が読みたい。

このおはなしの作者

小川未明おがわみめい(1882年~1961年)

※名前をクリックすると別ウィンドウでWikipediaの作者情報が表示されます。

前回までのあらすじ

デパートに行った帰り道。

すっかり暗くなった道を歩いていた年子は、ふと見上げた先に青く光る星を見つける。

すると、田舎に帰ってしまった上野先生のことを自然と思い出す。

その思い出の中で、年子は先生にきっと会いに行くと約束をしていた。

青く光る星を見た瞬間から、不思議なことに年子を先生が暮らす北へと向かわせるのだった。

会えると期待して行ったのに悲しい現実を突きつけられる話①【この話は5分で読めます】小川未明作、「青い星の国へ」の前編です。物語の漢字全てにルビが振ってあります。また、ルビ付きの1分で音読できるシートもダウンロードできます。...

おはなしの始まりはここから

★この文章は3分で読めます

東京とうきょうるときには、にぎやかで、なんとなくあかるく、うつくしいひとたちもまじっていた車室しゃしつうちは、とおみやこをはなれるにしたがって人数にんずうって、きゅうくらわびしくえたのでした。

そのとき、汽車きしゃは、やまやまあいだふかたに沿うてはしっていたのです。

「まあ、やましろだこと、ここからゆきになるんだわ。」

年子としこは、おもわずこういってをみはりました。

やましてごらんなさい。三尺さんじゃくも、四尺よんしゃくもありますさかい。おまえさんは、どこからっていらしたの。」

くろ頭巾ずきんをかぶったおばあさんが、みかんをむいてべながらいいました。

年子としこは、はなしかけられて、はじめて注意ちゅういしておばあさんをました。

なんだかあわれなひとのようにもえ、また気味悪きみわるいようにもかんじられたのです。

東京とうきょうからったのです。そして、つぎのつぎの、停車場ていしゃじょうりますの。」

くとくらくなりますの。」

おばあさんは、それきりだまってしまいました。

ゆき広野こうやはしって、ようやく、目的地もくてきちきました。

しかし、きゅうおもいたってきたので、通知つうちもしなかったから、このちいさなさびしい停車場ていしゃじょうりても、そこに、上野先生うえのせんせい姿すがたいだしようはずがなかったのです。

に、ケースをげて、不案内ふあんない狭苦せまくるしいまちなかへはいりました。

みちも、屋根やねも、一面雪いちめんゆきにおおわれていました。

さむかぜが、つじっている街燈がいとうをかすめて、どこからか、れたささおとなどがみみにはいりました。

どちらへがったらいいかわからなかったので、しばらくたたずんで、きかかったひとに、教会堂きょうかいどう在所ありかをたずねますと、すぐわかって、そこからさん四丁よんちょうのところでありました。

雪催ゆきもよくもったそらに、教会堂きょうかいどうのとがった三角形さんかくけい屋根やねは、くろえがされていました。

そして、かたわらのちいさなうちから、ちらちらとあかりがもれていました。

年子としこは、刹那せつなのち展開てんかいする先生せんせいとのたのしき場面ばめん想像そうぞうして、むねをおどらしながらはいってゆきました。

先生せんせいのおかあさんらしいひとが、夕飯ゆうはん支度したくをしていられたらしいのがてこられました。

そして、年子としこが、先生せんせいをたずねて、東京とうきょうからきたということをおききなさると、きゅうにお言葉ことば調子ちょうしくもりをびたようだったが、

「それは、それは、よくいらしてくださいました。さあおがりなさいまし。」

と、ちょうど遠方えんぽうからかえってきたように、親切しんせつにしてくださいました。

年子としこは、先生せんせい姿すがたえないのを、もどかしがっていると、おかあさんは、おちついた態度たいどで、しずかに、先生せんせいは、もうこのひとでないこと、なくなられてから、はや、半年はんとしあまりにもなること、そして、そのせつは、おらせせずにすまなかったとおはなしなされたのでした。

これをきくと、年子としこは、前後ぜんごをわきまえず、そこにきくずれました。

やがて、北国ほっこくよるはしんとしました。

しずかなのが、たちまちあらしにわって、吹雪ふぶき雨戸あまどおとがしました。

このとき、うちなかでは、こたつにあたりながら、年子としこは、先生せんせいのおかあさんと、おとうといさむちゃんと、三人さんにんで、いろいろおはなしにふけっていたのでした。

「スキーできる?」と、いさむちゃんがききました。

「ちっとばかり。」と、年子としここたえた。

「じゃ、明日あした、おねえさんのおはかへ、いっしょにゆこう。」

と、いさむちゃんが、いいました。

翌日よくじつは、いいお天気てんきでした。

ふたりは、まちへだたった、はやししたにあったてら墓地ぼちへまいりました。

墓地ぼちゆきまっていましたけれど、いさむちゃんは、見覚みおぼえがあったので、このしたにおねえさんがねむっているとおしえたのでした。

先生せんせいわたしはお約束やくそくまもっておあいしにまいりました。それだのに、先生せんせいは、もうおいでがないのです。わたしは、ひとりぽっちで、さびしくかえってゆかなければなりません。」

と、年子としこきはらして、わせました。

いさむちゃんは、ハーモニカをくちびるにあてて、ねえさんのきだったきょくを、北風きたかぜかってらしていたのです。

読了ワーク

思い出してみよう

  1. 年子はどこから汽車に乗りましたか。
  2. 年子は汽車の中で誰とお話をしましたか。
  3. 年子は汽車に乗って、誰に会いに行ったのですか。

調べてみよう

  1. “わびしい”の意味は何でしょう。
  2. “目をみはる”とは、どんな表情ですか。
  3. 尺とは長さの単位のことです。では、“三尺”、“四尺”はどのくらいの長さのことでしょうか。
  4. “つじ”とはある所を指しています。どんな所を指す言葉でしょうか。
  5. “もどかしい”の言葉の意味は何でしょう。

単語ピックアップ

1.不案内(ふあんない)

①細かい事や様子がよく分からないこと。②ある物事に対して、心得がないこと。

2.雪催い(ゆきもよい)

今にも雪が降り出しそうな空模様のこと。

速音読シートダウンロード

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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例

  1. 東京
  2. 黒い頭巾をかぶったおばあさん。
  3. 上野先生。