- つっこみは他の追随を許さない。
- 人と意見を交換しながら読みたい。
- 4歳以上の子どもに読み聞かせしたい。
このおはなしの作者
【作者】
グリム兄弟
・ヤーコプ・グリム(1785年~1863年)
・ヴィルヘルム・カール・グリム(1786年~1859年)
・ルートヴィヒ・エーミール・グリム(1790年~1863年)
【訳】
楠山正雄(1884年~1950年)
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前回までのあらすじ
水車小屋で粉をひくのを商売にしていた粉屋。
ある日、王さまと向かい合って話をする機会があると、粉屋は自分を良く見せるために「娘は藁を紡いで金にできる」と言ってしまう。
それを聞いた王さまは、粉屋の娘を城に呼び、藁を紡いで金にするよう命令する。
沢山の藁と糸車を目の前に、どうすれば良いのかわからない粉屋の娘は、途方に暮れるばかりだった。
そこへ小人が現れ、褒美をくれたら代わりに藁を金に紡ぐと言う。
娘は持っていた首飾りと引き換えに、小人に藁を金に紡いでもらう。
小人の仕業とは知らない王さまは、二度三度と粉屋の娘を城に呼び、藁を金に紡ぐように命じる。
その度に小人は現れ、褒美と引き換えに藁を金に紡ぐ。
二度目は持っていた指環、三度目は将来生まれる子どもを引き換えに、娘は小人にお願いしてしまう。
おはなしの始まりはここから
★この文章は3分で読めます
さて、そのあくる朝、王さまはやってきてみて、なにもかも、注文した通りにいっているのがわかりました。
そこで王さまは、娘と婚礼の式をあげて、粉屋のきれいな娘は、王さまのお妃になりました。
一年経って、お妃は、美しい子どもを生みました。
そうして、もう小人のことなんか、考えてもいませんでした。
すると、そこへひょっこり、小人が部屋の中に現れて、「さあ、約束のものをもらいにきたよ。」と、言いました。
お妃はぎくりとしました。
子どもをつれて行くことを堪忍してくれるなら、その代わりに、この国じゅう残らずの宝をあげるから、と言って頼みました。
でも、小人は、「いんにゃ、生きているものの方が、世界中の宝残らずもらうより、ましじゃよ。」と、言いました。
こう言われて、お妃は、おろん、おろん、泣きだしました。しくん、しくん、しゃくりあげました。それで、小人も、さすがに気の毒になりました。
「じゃあ、三日の間待ってあげる。」と、小人は言いました。「それまでに、もし、私の名前をなんというか、それがわかったら、子どもはおまえに返してあげる。」
そこで、お妃は、ひと晩中考えて、どうかして、自分の聞いて知っているだけの名前残らずの中から、あれかこれか、考えつこうとしました。
それから、別に使いの者を出して、国中歩かせて、一体、この世の中に、どのくらい、どういう名前があるものか、いくら遠くでも構わず、のばせるだけ足をのばして、訪ねさせました。
そのあくる日、小人はやってきました。
お妃は、ここぞと、カスパルだの、メルヒオールだの、バルツェルだの、でまかせな名前から言いはじめて、およそ知っているだけの名前を、片っ端から言ってみました。
でも、どの名前も、どの名前も、言われるたんびに、「そんな名じゃないぞ。」と、小人は首を振りました。
二日目に、お妃は、使いの者に、今度は近所を、それからそれと歩かせて、一体世間では、どんな名前をつけているものか聞かせました。
そうして、小人がまた来ると、できるだけ聞きなれない、できるだけ変てこな名前ばかり選んで言いました。
「たぶん、リッペンビーストっていうのじゃない。それとも、ハメルスワーデかな。それとも、シュニールバインかな。」
でも、小人は相変わらず、「そんな名じゃないぞ。」と、言っていました。
さて、三日目になったとき、使いの者は帰ってきて、こういう話をしました。
「これといって、新しい名前は一向にたずねあたりませんでしたが、ある高い山の下で、そこの森を出外れた所を、わたくしは通りました。
ちょうどそこで、狐と兎が、さようなら、おやすみなさい、を言っておりました。
その時、わたくしはふと、そのへんに一軒、小家を見つけました。
その家の前に、たき火がしてありまして、火の周りに、それはいかにもとぼけた、おかしな恰好の小人が、しかも一本足で、ぴょんぴょこ、ぴょんぴょこ、とびながら、跳ね回っておりました。
そうして、いうことに、
今日はパン焼き、明日は酒づくり、
一夜明ければ妃の子どもだ。
はれやれ、めでたい、誰にもわからぬ、
おらの名前は、
ルンペルシュチルツヒェン。
と、こう申しておりました。」
使いの者の話のなかから、小人の名前を聞き出したとき、お妃はまあ、どんなに喜んだでしょう。みなさん、察してみてください。
さて、そういう傍から、もうそこへ、例の小人は現れました。
そうして、「さあ、お妃さん、どうだね、私の名前はわかったかい。」と、言いました。
お妃はわざとまず、「クンツかな。」
「ちがうわい。」
「では、ハインツね。」
「ちがうわい。」
「じゃあ、たぶん、おまえの名前は、ルンペルシュチルツヒェン。」
すると「悪魔が話したんだ、悪魔が話したんだ。」と、小人は叫びました。
そうして、腹立ちまぎれに、右足で、強く大地を蹴りつけると、体ごと埋まるくらい深い穴が開きました。
それから、怒りたけって、両手で左足をひっぱる拍子に、自分で自分の体を、まっぷたつに引き裂いてしまいました。
読了ワーク
思い出してみよう
- 小人の言う「約束のもの」とは何ですか。
- 小人は何をしたら子どもは返してあげると言いましたか。
- 三日目にして、お妃は小人の名前を知ることができました。それはなぜですか。
- 自分の名前を言い当てられ、怒った小人。最後はどうなってしまいましたか。
調べてみよう
- 『妃』と『后』の違いは何でしょうか。
- 『生む』と『産む』の違いと使い分けは何でしょうか。
単語ピックアップ
1.堪忍(かんにん)
①人の過ちを我慢して許すこと。②痛みや苦しみをじっと耐え忍ぶこと。
2.気の毒(きのどく)
①他人の苦しみに同情し、哀れに思うこと。②人に迷惑をかけて申し訳ないと思うこと。
音読シートダウンロード
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読了ワーク『思い出してみよう』の解答例
- お妃(粉屋の娘)が最初に生んだ子ども。
- 小人の名前がわかったら返してあげると言った。
- 小人が自分の名前を言っているのを使いの者が聞いたから。
- (両手で左足をひっぱる拍子に)自分で自分の体を、まっぷたつに引き裂いてしまった。